BATONERがBATONERであるために。

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BATONER といえば、リンキングと成形編み。

リンキングとはニット特有の縫製技法。

ミシンで縫うのではなく、ニットの細かなループひとつひとつを目で見て拾い、手刺しで機械にかけ、つなぎ合わせる。

仕上がりの美しさや耐久性、縫い目で伸縮性を損なわない事による着心地の良さ。

多くのメリットがある反面、想像する通り非常に手間の掛かる技法で、高齢化による技術者不足などにより段々と希少になりつつある。

成形編みは、ニットの各部位をはじめからパターン通りの形に編み上げるやり方だ。

生地にハサミを入れない。

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成形編みでパーツをつくり、リンキングでつなげる。

チョキチョキと切る事もせず、ダダダーっと縫う事もせず、ニットはニットらしく「編む」という行為のみによって BATONER のニットは完成する。

自分の浅い知識と理解のみで書いてしまっているけど、大きく違ってはいないはずだ。

BATONER のニットを美しいと感じる理由が何となく分かる気がしないだろうか。

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今回リリースするイノセントカシミヤニットパンツも、もちろんリンキングと成形編みによって作られている。

しかし実は、別注を BATONER に相談した時点では、リンキングは難しい、と言われてしまった。

素材の特性上、パンツとしては強度に問題が出るかもしれない。

それが理由だった。

イノセントカシミヤは、あまりウエイトの無いミドルゲージのニット。
豊かなドレープを伴う柔らかさと軽さが魅力である。

リンキングによる縫製で強度を保つのは特に難しいのだ。

着用時におけるメリットが生産時にはデメリットとなってしまった。

しかし諦めたくない。

このニットでパンツをつくれば絶対に良いものができるという確信があった。

リンキングではなく、充分な強度が出せる縫製仕様でサンプルを進める事に決めた、そのしばらく後。

「やっぱりリンキングでやりましょう。」

突然、そうなった。

リンキングで制作できる方法を再度検討してくれたのだ。

こちらとしては嬉しいばかりなのだけど、一体何故なのか。

きけばそれは、デザイナー奥山さんの一言だったという。

「ウチがリンキングでやらないでどうするの」

ありがたいと思うと同時に、申し訳なく思った。

リンキングでなくても仕方がない、と安易に判断した自分が恥ずかしかった。

別注とはいえども、BATONER の製品なのだ。

BATONER に別注する事の意味と意義。

まず自分がそれを理解し、大切にするべきではなかったか。

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ともかく縫製の問題はクリアしたものの、成形編みでパターンをつくる事が難航した。

制約が多く、なかなか思うようなシルエットが生まれない。

しかしこれは余談だが、ファーストサンプルが上がって最初に試着した時、

「キターー!!」

と心の中で叫んでしまった。声に出ていたかもしれない。

そのくらい穿き心地が凄かったのだ。

このパンツをつくろうと思った事は間違っていない、その確信はますます強くなった。

あとはパターン、シルエット。

穿き心地はすでに完璧だが、かっこよくなければいけない。

はじめ完成の目標にしていたサードサンプルにも納得がいかなかった時、

「大丈夫です、こうなったらとことんやりましょう!」

と言って頂いた。

裁断してしまえば、ハサミを入れてしまえば、簡単なのかもしれない。

けどそれじゃあ駄目だ。

BATONER の成形編みとリンキングで最高のニットパンツをつくる。

この別注の意味と意義はそこにあると決めたのだ。

そして4度目の正直。

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素晴らしいものが出来上がった …

自分史上最高のニットパンツだと本気で思っている。

ウチらしくゆったりとしたボリュームのあるシルエット。

膝下はテーパード。

はじめはあまりテーパードさせないイメージで進めていたのだけど、膝下まで太くするとニット特有の落ち感でメリハリの無い印象になってしまった。

そこで股下を長めに設定し、裾に溜まりをつくる事で、テーパードさせつつも膝下にボリュームのある印象を残すようにした。

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裾は幅がやや広めのリブ仕様に。

裾の引きずりと、靴の踵に裾が変な感じに引っ掛かる (自分はそれがとにかく嫌いで、そうなるパンツは穿きたくない)事を防ぐためにリブを付けた。

見せる事は想定していない。

周りに生地が溜まりをつくり、自然にリブが隠れるように股下を設定している。

ボリュームがあってもタイトでも、ハイでもローでも、どんな足元にも綺麗に合わせられるはず。

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股上は思い切った深さに。

ドレープの強い生地なので、ヒップラインを拾い過ぎない方がシックだと思ったからだ。

ウエストはゴム紐のイージー仕様なので、腰位置は自由に決める事ができる。

股上を深くした事で腰位置の自由度も広がった。

高めの位置で穿けば裾の溜まりが少なくなり、綺麗なテーパードラインが出る。

低めの位置で穿けばダボっとしたルーズな雰囲気に。

そのように腰位置で見せ方を変えられるし、幅広い身長、体格の方に対応できる。

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ウエストを固定するための紐は、細かいけどこだわりたかったところ。

ニットパンツには本体と揃えたニットの紐が付いている事も多く、それだと伸縮するからしっかり締めにくくてちょっと微妙だと感じていた。

だから結局は普通にコットンの平紐が一番かな、と BATONER に相談したところ、素材は本体に合わせた方が見た目に統一感が出るのでは、という最もな返答。

実用性とルックス。

妥協無しのハイブリッドで完成したカシミヤ製の平紐。

ファーストサンプルの時点で既に100%完璧に満足する出来栄えだった。

一発OK。さすがだ。

一見すると普通のスウェットパンツに付いているような平紐なのに実はカシミヤ100%。

そういう美意識好きすぎる。

指先でコショコショ触れると確かにカシミヤの滑らかさがあるのだけど、伸びずにしっかりとウエストを固定できる。
やば。

素材、穿き心地、全体のシルエット、細部のディテール。

全てにおいて思い描いていた以上のものが出来上がった。

セットアップの構想からスタートした企画だけど、パンツ単品でお選び頂いても充分にインパクトのある仕上がりになったと思う。

スウェットパンツを穿く感覚で様々なスタイリングに取り入れてもらいたい。

イージーなニットパンツのリラックス感と、素材とシルエットの上質さによるラグジュアリー感。

そして極上の穿き心地。

部屋でくつろぐ時だってセットアップで着て欲しい。

そのままアウターだけ羽織って出掛けられる。

何ならそういう使い方が一番かっこいいような気もしている。

大事にしまっておく事 = 大切にする事ではないのだ。

このとろけるような着心地をできる限り四六時中存分に味わうのがこのニットを大切にするという事だと、そう断言する。

カシミヤは毛玉になっても素敵だし、大きな声では言えないけど自分は家で洗ってます。

(自己責任でお願いします)

またしても長くなりすぎてしまった。

もう読むの疲れましたよね。

すいません。

受注会の詳細については次回で。

次が最終回です。

BATONER INNOCENT CASHMERE KNIT PANTS
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