意味と意義

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洋服をつくる事において、ゼロからのイノベーションのようなものはもうあり得ないのかもしれない。

今我々が着ている洋服の形やディテールは、たどれば必ず過去に行き着き、そこからの延長線上にある。

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否定的に捉えているわけじゃない。

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過去の踏襲の積み重ねの中から何を選び、何を加え(もしくは削り)、どのように進化させてどのような表現で自らの世界観として提示するのか。

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それが現代における洋服のデザインであると思うし、異常に高いレベルで成立させているブランドやデザイナーは、やはり特別な存在なのだ。

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自分にはそんな事はできない。

ものをつくる側の人間だとは全く思わない。

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昔から洋服が好きだったが、不思議とつくる事にはさほど興味がなく、それでも洋服に関われる仕事として、店をやる事を選んだ。

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洋服がつくられる現場…とまでいうと言い過ぎになるような気もするけど、店を始めた事でだいぶ川上の方までを見られるようになり、更に確信したものだった。

やっぱり自分には服をつくる事はできないな、と。

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有り難いほどに取引先に恵まれ、素晴らしい才能を持った方々と出会い、仕事をするようになった。

その非凡なセンスと知識、そして熱量を目の当たりにしたのだから無理もないだろう。

自らのやるべき事をはき違えずに済んだだけでも、凡人には上出来だ。

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ともあれ、自分はイチ洋服屋として、才能ある人々がつくったものを皆に届ける事に専念しようと、あらためてそう思ったのだった。

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正直に言えば、もともとは別注というものに対してもやや懐疑的なスタンスだった。

ブランドとデザイナーのクリエイションを信じるが故に、インラインこそがその本質だと思っていて、外側から口や手を出すのはちょっと違うような気がしていた。

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ところが転機が訪れる。

毎冬、BATONER のカシミヤセーターを死ぬほど愛用しているうちにふと思ってしまった。

「このニットと同素材のパンツが欲しい。」

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インラインではパンツの展開がない。

でも欲しい。

はじめて別注が頭をチラつく。

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結果的にはまず25AW、そしてこれから26AWで再度別注のカシミヤパンツをリリースさせて頂く事になり、それがウチでは最初の別注なのだけど、思い付いたのは 24AWでのリリースも可能な2023年の冬頃だった。

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けれどためらう。

そんな思い付きなんかでつくってしまって良いのか?

ただ自分が欲しい。

そこに意味と意義はあるのか?

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色々な考えがあって当然だと思う。

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今でも自分は別注ありきで希少性などを売りにするために企画する別注にはまるで興味が無いし、基本的にはブランドのクリエイションを純粋な形でお客さまに届けたいと考えている。

それくらいウチのブランドのつくるものを信頼している。

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だけど一度は保留にしてしばらく悩み、それでも諦めきれずに別注という形でカシミヤパンツをリリースし、それが想像以上に良い出来栄えになった事で気が付いた。

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こういうもののつくりかたもあるのだ。

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自分は確かにものを生み出せる人間では無い。

けれど、服を仕入れ、それを売るという仕事をまがりなりにも10数年続ける間に、服を着るという行為は、おそらく他の人たちよりもずいぶんと多く繰り返してきたと思う。

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なにも特別な事ではない。ただ単純な反復。

自分にはそれしかできなかったのだけれど、だからこそひたすらに反復する事でたぶん身に付いた感覚がある。

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ここがこうだったら。

こういうものがあれば。

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服を楽しむために、気持ちよく、感じよく着るために何が必要なのか。

そういった「気付き」を得る感覚は、服を着るという行為を繰り返した長い時間の中で、人よりも少しだけ身に付いているような気がするのだ。

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10数年も続けてきた。

そのくらいのささやかな成長はあっても良いではないか。

そう思いたい。

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そのちょっとした気付きをフィードバックする。

ゼロから服をつくる事はまったく無理だが、それならできるような気がする。

必然的に自分が欲しいもの、着たいもの、という事になるのだけど、それもまたウチのお客さまにとってはメリットがあるのかもしれない、と思うようになった。

別注のカシミヤパンツがそうだったから。

自分がシンプルに欲しいと思い付いたものを、100%理想通りに形にしてもらった。

どこにも忖度はない。

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それを自分自身と同じように気に入ってくれるお客さまがとても多くいる事にはじめは戸惑いながらも、なるほどこれで良いのだな、と少しずつそう思えるようになった。

考えてもみれば、自分が欲しいと思うものは、ウチの店で売っているものと相性が良いに決まっている。

自分が気に入るのなら、お客さまにも気に入ってもらえるのは当然かもしれない。

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だったら。

あれこれ小難しく考えずに、自分が欲しいものを、ブランドの力を借りて形にすればいい。

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ようやくそんな風に納得する事ができたのだけれど、きっと純粋な別注ってはじめからそういうものなんだろう。

ぐるぐると考えて結局普通の事をやっているような気がする。

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まあ仕方がない。

そういう性格なのだから。

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そんなこんなで夏の別注品をリリースいたします。

詳細は次回の BLOG で。

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期待してください。自信作です。

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DIMPLE